法律log

労働契約の原則

第3回は労働契約の原則です。この原則は労働契約法第3条に集約されていますが、5つの原則から成り立っています。

1 労使対等合意決定原則

これは

「労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものである」

という労基法第2条1項に対応した規定といえます。理念的には同じものである。        法的効果を発生させるものではないが、もし、労働契約が対等な立場での合意を経ず締結されたものであるなら、その労働契約の効力に疑いを生じることになるし、合意を経ずに成立した労働契約の変更は原則認められないであろうことを意味するものです。あとで触れますが、第10条は就業規則による労働条件の変更の、労使合意によらない労働条件の変更について定めていますが、これは例外的に認めているものです。

原則は、「労働契約上、合意によらない労働条件の変更は認められない」ということです。

2 均衡待遇の原則

これは、正規従業員と非正規従業員の処遇格差問題が発端で浮上したものです。

後日、判例のblogで取り上げたいと思いますが、「丸子警報器事件」の考え方がインパクトを与えているものです。

いままでは、均衡という考えが、労働契約の一般原則にはなっていなかったので、労働契約法に均衡の考慮が規定されたことの意味は大きいでしょう。

「就労の実態に応じて」という条件が盛り込まれていますが、文字通り、就労の実態を踏まえながら、労働者ごとの労働契約の内容がバランス欠如にならないように留意するという理念的なものです。

しかし、例えばパートタイマーと正社員で同じ業務に就いている場合、十分に均衡を考慮できたのに、均衡を無視して契約内容が変更されたということが起きれば、均衡待遇視点からは、その変更は認められないという結果になることも考えられます。

3 ワークライフバランス

最近、ワークライフバランスが一般的な社会の考え方になってきた。つまり、社会通念になりつつあるということです。

労働契約を「仕事と生活の調和にも配慮」して締結・変更しなければならない。配慮しなかった場合の法的効果は不明ですが。

家庭と仕事の両立可能な制度の構築が労使間に促進されること、また、就業規則等で家庭生活に配慮を欠いた規定があれば、労働者がその規定の適用を拒否したことで規定の拘束力が否定されることなどは考えられるでしょう。

4 信義誠実お原則

従来から民法1条2項に規定されていたものですが、この信義則が労働契約固有の原則として規定されたことに意味があります。

裁判ではこれまで労働事件の処理に民法の信義則を用いてきました。今後は労働契約法の信義則が登場してくるでしょう。

労災では使用者は、業務上の原因によって労働者が傷害や疾病を被らないように配慮する義務があいますが、根拠は信義誠実の原則です。

労働者も使用者の社会的信用に支障をきたすような言動は慎しまなければならないという忠実義務も根拠は信義誠実の原則です。

5 権利濫用法理

これも、民法1条3項を労働契約法でも定めたものです。特別法である労働契約法で定めたことで、労働契約に関する各ステージにおいて、権利濫用とは何かが問題視されていくと考えられます。また、使用者の権利である人事権その権限が権利濫用になっていないか常に問われることになると考えられます。そのチェック根拠が労働契約法に置かれる点の意義は大きいと言えます。

  

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労働契約法の労働者・使用者

第2回は、労働者と使用者についてです。実務では、特に「労働者」につては法律上の労働者に該当するか否かが争われる場面では、非常に大切な判断基準になるところです。

労働基準法の定めを記載しておきます

労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう

使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう  

民法623条では、雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる

とあります

労働契約法上の労働者も、使用されて賃金を支払われる者という意味では労働基準法上の労働者と似ているます。しかし、労働契約法上の労働者には「事業」という条件がふくまれません。したがって、労働契約法上の労働者の方が広義と言えるでしょう。

例えば、Cさんが個人的な株式投資をやっていて、データや情報管理等のために作業補助者としてXを雇った場合は、Cさんの株式投資そのものには事業性はないし、事業所でもないのでXは労働基準法上の労働者には該当しないが、労働契約法第2条の労働者には該当することになり、労働契約法の適用を受けることになります。

こうしてみていきますと、労働契約法上の労働者は

労働基準法上の労働者+事業に使用されない者+民法623条労働に従事する者

ということになろうと考えられます。

労働契約法第2条はここが急所になる部分です。

賃金に関しましては、労働基準法上上の概念と同様、「名称を問わず労働の対償として使用者が労働者に支払うもの」です。

使用者については、労働者が決まればおのずと決定される部分です。労働者とみなされる者を使用して賃金を支払う者ということになります。ただし、労働基準法上の使用者は事業主だけではなく、「事業主のために行為をするすべての者」も、実態の適用上該当すれば使用者側になる場合もありますが、労働契約法上の使用者は「使用する労働者に賃金を支払う者」だけである点が異なります。

労働者の立場から見れば、従来労基法上の労働者に該当しなかったために理不尽な立場に置かれてきた者が、労働契約法によって労働者に該当すると判断がなされれば、労働契約の成立・変更・終了のという雇用ステージで根拠が設定されることになると考えられます。

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労働契約法の目的

第1回は2008年3月1日施行の労働契約法です。初回は目的を取り上げますが、労働契約法は、国会の審議会でかなり議論がなされ、難産の末、成立した法律です。中身をみてあれっと感じた方もいると思いますが、なーんだ民法や判例で出ていることばかりじゃないか・・と。しかし、わずか19条しかないものですが、労働契約法という特別法で新たに条文化されたことに意味があります。

目的は第1条に書かれていますが、この法律全体を要約するような内容になっています。キーワードがいくつじか盛り込まれていますので見ていきたいと思います。

まず「自主的解決」です。概念的に労働契約の成立・展開・終了の場面で自分の意思によって契約交渉を行うという原則が確立されたことは意味があると言えます。したがって、たとえば、パートタイムの女性が、パートだからと半ば、ばかにされたような態度でいいかげんに契約が結ばれたような場合は、この第1条によって、問題がある契約交渉の形態であったと主張することができる根拠条文になり得ますし、契約無効の要素になることも考えられるでしょう。このようなことは、主に最低の労働条件について定めた労働基準法には今まで定めがなかった部分です。

2つ目は「合意原則」です。これまでは、労働基準法の最低基準担保の強制により、合意の契約は最低基準を下回らないということになっていたし、労働組合という手段を通じて対等な「合意」を実現してきたものです。それが、契約内容にかかわる労働条件は、一方的決定は許されないということを明確にしたものになっています。ただし、契約を成立させて内容を確定させる合意とは何かということをよく掘り下げておく必要があります。このテーマはまた別の機会にlogで書きたいと思います。

3つ目は「労働契約に関する基本的事項」です。政府案は、労働契約が就業規則に制約されるような印象を与えるため、修正されました。労働契約の内容が就業規則の内容にひっかかっている場合には、労働契約における就業規則は重要な役割を果たすことにこといなりますが、原則として、就業規則が労働契約を制約するものではないということです。

4つ目は、「合理的な労働条件の決定又は変更」です。契約そのものは、両者の自由な意思により合意すれば、決定も変更も公序良俗に反しない限り尊重されるのですが、労働条件についてはこれまでも、「合理的」かどうか問われてきました。実務上は就業規則の一方的変更により労働条件が変更される場合が多いのですが、問題が起きた場合、合理性のチェックがされてきたものを労働契約上で明文化したものと言えます。

最後は「労働者の保護」です。これまでも様々な労働関係法に労働者保護の概念は取り入れられています。しかしここでは労働契約法におけるステージ設定は当事者の対等の概念よりも労働者の保護を取り入れたものと考えられます。

次回に続く・・・

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